判断のための情報は本当に真実か
次の図は、多くの企業人が顧客のニーズを考えるときの顧客志向といわれる発想法です。
「志向」とは意識が一定の対象に向かうことです。
すなわち、企業の立場から顧客を観たり考察する行為ということになります。
顧客志向の特徴は、顧客のニーズを真剣に調査したり議論するあまり、無意識のうちに企業の考えや都合を優先してしまうことです。
図中のレンズのようなもの、これが企業のフィルターで、企業経営者には全く見えない存在ですが「企業の都合」というバイアスがかかっています。
バイアスがかかったフィルター越しに観る顧客は、同じようにバイアスが反映されてしまいます。
つまり、顧客が鮮明に観えない状態を企業自らが作ってしまっている訳です。
「顧客志向」による経営者の情報は、店長・SV・従業員からの報告、顧客データ分析資料などもそれに該当します。
これらのバイアスのかかった加工情報を基に経営戦略を策定すると、正しい発展のベクトルから外れてしまいます。
「顧客情報」を区分定義すると見えてくるもの
”知っているつもり”でも、実は何も見えていない!
顧客情報は、伝達者の意思が介入すると、様々に変化します。
発生源に近くなければ真実に近づくことができません。
「顧客情報」を発生源に近い順に
●1次情報
●2次情報
●3次情報
に区分します。
★顧客情報を鮮度で区分すると、情報の信憑性に優先順位を
付けることができます。
● 1次情報 ●
| ● 2次情報 ●
| ● 3次情報 ●
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↓ ↓ ↓ ↓ ↓
◆「顧客視点」でなければ正しい顧客情報は入手できない
「顧客視点」とは、顧客の立場で自店を視る発想法です。
「顧客視点に立って考える」とは別ものです。
顧客視点に立って考えることも顧客志向の発想と同じで、顧客視点ではありません。
どんなに顧客のことを考えても推測の域、つまり「知っているつもり」でしかないからです。
企業人は自店の顧客一人ひとりの気持ちにはなれないのです。
ビジネスにおける戦場は、すべて顧客の心の中で繰り広げられているのですから、戦場の様子を熟知せず地図だけで判断していることになります。
戦場は刻々と変化し、それも一カ所ではありません。
それでは、顧客視点の情報とは如何なるもので、どのようにしたら入手できるのでしょう?
それは・・・
『自店の顧客から本音を直接聴く』ことが唯一の方法です。
「本音」でなければ用を足しません。
どのようにして本音が出やすいシチュエーションを用意するか?・・・
しかも自発的にです。
顧客の本音情報だけが、自店に対する真実の評価・期待・意見です。
これが、顧客を知り、自店を知る、最も正確で客観的な情報です。
「経営改善循環システム」には、上記の顧客の本音情報を収集する機能が備わっています。
《参考資料》
収益に至るプロセスを理解する
「収益」はどのような要因が大きく影響するのでしょうか?
経営者がどんなに檄を飛ばし命令しても思うようにならない悩ましい課題。。。それが「売上」というものです。
売上は、企業が提供する価値を顧客が購入した「結果」ですから、結果から先に求めることは、理にかなったことではありません。
★企業収益は次の連鎖の結果、生み出される定理を紹介します。
企業の長期的な収益の源泉は顧客ロイヤルティ(※1)にある
顧客ロイヤルティの原動力は顧客満足である
顧客満足の原動力は商品・サービスの価値である
商品・サービスの価値は従業員の生産性を高めることで創造される
従業員の生産性の原動力は従業員ロイヤルティである
従業員ロイヤルティの原動力は従業員満足である
従業員満足の原動力は社内サービス(※2)の質である
(※1)ロイヤルティ(Loyalty)とは、忠誠心・支持率を意味します。
(※2)社内サービスの質とは、従業員が仕事、同僚、会社をどのように思っているかが集積されたものです。これは、顧客が自社をどのように思っているかと同義語です。
従業員満足を経て従業員ロイヤルティへ
顧客満足を経て顧客ロイヤルティへ
両者は同じアプローチでマネジメントできる
という結論に至ります。
ES+CSから顧客ロイヤルティへ
CS(顧客満足度)を高めるために、どの企業も努力しています。
しかしその結果、収益が高まったとのハッキリした因果関係を明解に実証されたものが少ないのはなぜでしょう。
ES(従業員満足度)とCSを同時に高めるための社内プロジェクトも盛んですが、これも同様です。
ESやCS活動を否定するものではありませんが。。。
「なんのために、それはされるのか!?」を明確に定義することが重要です。
「収益」という結果を求めるなら、ESとCSを前提にして「顧客ロイヤルティ(Loyalty:忠誠心・支持度)」を高いレベルに引き上げ維持することを目標とすべきです。
そこでは、顧客ロイヤルティを正確に測定できるかどうかが重要になってきます。正しく測定できればロイヤルティについて具体的な目標を立て、それを業績と比較できます。つまり、収益性やそれに必要な質を管理できるようになるからです。
これまで顧客ロイヤルティを測る方法は、手間暇を要するアンケートが主流でした。しかし、ある手法が発見され、収益に直結することが実証されました。
収益成長の指針となるのは、たった1つだけの質問でした。しかも、顧客満足度やロイヤルティを問うものではなかったのです。
その質問とは、
「この店を友人や同僚に推薦したいと思いますか?」
だけです。
回答形式と評価法は、10点満点で10点〜0点の11段階の評価を設定します。□ぜひ推薦したい10点、□ どちらでもない5点、□ まったく推薦したくない0点です。
※測定法と評価法の詳しい解説は、下段の「参考資料」をご覧ください。
●顧客満足度(CS)と顧客ロイヤルティの相関関係
●顧客ロイヤルティの測定と評価法
質問:「あなたは、この店を友人や同僚に推薦したいと思いますか?」
回答形式と評価法は、10点満点で10点〜0点の11段階の評価を設定します。
□ぜひ推薦したい10点、□ どちらでもない5点、□ まったく推薦したくない0点です。
顧客の回答と実際の購買行動、口コミとの関係調査から、熱心な支持者がいかに大切な存在であるかが明確になりました。
最高点の10をつけた顧客たちは、つぎの中立者たちと比べて、リピート率が3倍だったからです。
上記の顧客行動から、中立の8か7の点数をつけた顧客は、推薦者予備軍と判断するだけではなく、批判者予備軍でもあるとの認識に立った方が正しい判断と言えるようです。
このロイヤルティ評価システムを戦略的に導入すると、従業員たちに明らかに緊張感が生まれます。
収益の増加・成長を続けるための第一歩は、推薦者を増やし、批判者を減らし、目下の推薦者の正味比率を全従業員に公開することです。
成長のための究極の指針は他でもない推薦者の正味比率です。
この数字は単純ではありますが意味深長です。
推薦者の比率から批判者の比率を引いたものが、推薦者の正味比率です。
この数値を継続的に調べると、顧客ロイヤルティを測定・管理するうえで大変役に立ちます。
以下にその算出方法と利用方法について説明します。
まず「この店を友人や同僚に紹介したいと思いますか?」という顧客アンケートを実施します。
10(ぜひ推薦したい)から、5(どちらでもない)、0(まったく推薦したくない)までの段階評価の形式を途中で変えはいけません。質問数を増やすことは厳に慎んでください。データの信頼性が損なわれ、回答率も落ちるからです。
アンケ−トの回答が10もしくは9だった顧客(推薦者)の比率(10か9と採点した顧客数÷アンケートに答えた全顧客数)から、6以下の顧客(批判者)の比率(6を含めて、それ以下の採点をした顧客数÷アンケートに答えた全顧客数)を差し引き、推薦者の正味比率を算出します。
仮に推薦者が35%、中立者が45%、批判者が20%の企業があれば・・・・
(推薦者35%ー批判者20%)÷100%=15%ですから、推薦者正味比率は15%となります。
思ったより低い数値が出ても驚かないでください。28業種400社以上の企業で、2年間13万件の回答に基づく推薦者正味比率の平均値はわずか16パーセントです。
正味比率を算出した後は、その向上に努める訳ですが、参考までに、飛躍的な成長を実現している、イ−ベイ、アマゾン・ドットコムの推薦者正味比率は75〜80%を超えています。
世界水準のロイヤルティと、それに伴う成長率を追求したいのであれば、目標は70%以上に置くべきでしょう。
推薦者正味比率は、地域、支店、販売やサービス担当、顧客セグメント毎に比較することにより、共有すべきベスト・プラクティス(学ぶべき先進事例)や差異の原因がわかります。
さらに重要なのは、同業他社との比較です。調査員を使って同じ手法で調査すれば、自社のポジションを確認することができるのです。
顧客が他人に紹介したくなるほどの強い支持がなければ、企業はまず成長しないことは確実です。
その意味から推薦者の正味比率の算出は有用と考えられます。